きままに

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映画『ザ・クリエイター/創造者』感想


珍しく映画の感想です。感想ブログだからね。ゲーム以外でもいいはずだ。


X(旧Twitter)上で、数週間前から目に入ることが多くなっていった『ザ・クリエイター/創造者』。

 

www.20thcenturystudios.jp

 

 

基本的に私はX(旧Twitter)では、今後自分が視聴する、もしくはプレイする予定のある作品のタイトルが目に入った場合、タイトル以外が目に入らないように爆速で流すスタイルで生きているので、本当にタイトル以外の情報を何も知らなかった。

 

なんならポスターすら見ていなかったので、当然あらすじすら知らず、
「クリエイターってタイトルだからモノづくりの苦悩がテーマの話なのかな。そういう話好きそうなタイムラインにしてるし」などと的外れなことを考えていた。
全然違う話だった。

 

後日、映画情報に疎い友人に今作を観てきたことを話したところ、
「あぁ、あのTverでCMしてる怖そうなやつ」
と言われ衝撃を受けた。
興味なさそうな友人ですら知っていたのに──。


そんなジブリ版『君たちはどう生きるか』を初日に観に行くのとほとんど同じような状態で劇場の席に座ることになった。

結果、とても私好みな面白いトンチキSF映画だった。
やっぱり自分で育てたタイムラインは信じないとね。
今そのタイムラインは基盤ごと寂れていくかもしれない状態に直面しているけれども…。

 

というわけで少し纏まった感想を書いていく。
ちなみに私は、今作を手掛けた監督の他作品は未視聴の映画ペーペーです。
スターウォーズの監督さんなんですね。(スターウォーズ全て未視聴)

 

 

あらすじ

 


物語は80年代(?)ぐらいの架空のAI発展の歴史映像から始まる。
どこかの記事によればSONY任天堂のデザインを意識した自律思考を持つAIを搭載したロボットが発展していき、人類と共存していたが、ある日ロサンゼルスに核爆弾が落ち、100万人が灰となってしまう。
それがAIのせいとされ、アメリカではAIを禁止にし、廃棄処分にする動きが活発化。
しかしアメリカは自国のAIだけでは飽き足らず、未だにAIと共存を続けているニューアジアのAIをも攻撃していく──。


と、そんないろんな意味で大丈夫なのか?となる導入から、主人公であるアメリカ側の軍人であるジョシュアと、その妻でありAI派のマヤとの別れがあり、
その5年後、ジョシュアは軍からAIの創造者である「クリエイター」と、そのクリエイターが作った兵器を探すように命じられる。
そして探索した地で発見した兵器は、少女の形をしたAIだった。

と、そんな始まりから兵器であるAI、アルフィーとジョシュアの逃避行が始まる。
ここからは私が好きなこの映画のポイントを語っていく。

 


レトロガジェットたち

 

 

逃避行の道中からずっと映る、東南アジアとレトロなロボットの組み合わせが絵になっていてとてもいい。

SFチックな風景と東南アジアの融合は、『劇場版PSYCHO-PASS』や『PSYCHO-PASS Sinners of the System Case.3』でも見られたが、無骨な構造剥きだしのロボットがそこらで生活している様子を実写映画で見るのはやはり新鮮だった。

 

psycho-pass.com  別の映画の話してすんません。

 

 

逃避行の過程で妙ちきりんな機械もたくさん出てくる。
まずは証言を得たい死体の脳に故障したロボットを繋げて、限られた時間だけ死人と話せるようにする機械、アメリカ製だ。

逆転裁判霊媒みたいなものかなと初見時は流していたが、最後までこの映画を見ると、なんとしてでも情報を得ようとするアメリカの執念のようなものを感じる。

 

ちなみにアメリカがロボットの死体から証言を得たい場合、ロボットの意識がはっきりしない程度まで復活させ、そのロボットの身近な人に成りすまし情報を得たあともう一度射殺していた。完全に悪役だぜアメリカ…。


そして恐らくこの映画を観た人の大半は話題にしているであろう、自律歩行する自爆ロボットである。これもアメリカ製だ。

 

この自爆ロボットはデカい鋼鉄製の樽に簡単な手足がついている。
そして電源をつけると、設定した位置に向かっていいフォームで走り出し、時間が来ると所定の位置で自爆する。

装甲も堅いため、自爆する前に撃破されることもない。恐ろしい兵器だ。
そんな兵器である自爆ロボットくん、起動された瞬間、
「貴方と共に戦えて光栄でした……」
と、わざわざ告げてくる。今初めて起動されたのに……。

というか貴重な自爆までの制限時間を使ってそんな……。

 

…この自爆ロボットくんを考案した作中の科学者たちは、一体何を思ってこんなことを言わせる機能をつけてしまったんだろうか?

起動する人によってはトラウマになるぞ!

 

でもこの自爆ロボットくんを使うのはAI絶対壊す思想に塗れたアメリカ人たちだ。
序盤でアメリカ側にいた主人公ジョシュアが、人間臭いことを言う壊れたロボットを強制停止させながら
「これは機械だ(だから壊しても問題ない)」
と怯える同僚に伝える場面があるので、このスタンスはあの世界のアメリカ人の大半のスタンスなのかもしれない。怖〜
(いいのか?アメリカ人を融通のきかない暴君みたいに描いて……)

 

なんならアメリカ側のメイン悪役戦艦兵器『ノマド』も、いちいち宇宙からここの地形をスキャンしていますよー!と言わんばかりの青いレーザーを照射する。
更にどこかに爆撃をする時も青いレーザーでここを狙ってますよー!とわざわざ教えてくれる。
映像的には分かりやすいが、だいぶ面白い兵器を作っていますよねアメリカさん……。
レーザーを照射するということは位置をもろに露呈させることと同義だし……。
まぁ宇宙にあるからどこにあるか分かってもいいのか……。

 

 

このように、変な機械はアメリカ側にあるものが多い。
AI禁止にしたせいでこの方向性の機械たちが生まれたんだろうか?
そういう方向からAI禁止にしていいんですか?と問いかけているんだろうか?たぶん違う。

 

 

このトンチキな兵器たちを見た私は、
「あっこれ、割とB級映画なのかな?」
などと考えてしまったが、私は普通にB級感溢れる映画も好きなので、別に問題はない。

出てくる機械たちが全てどこか昔懐かしいSF作品感溢れるUI、フォント、デザインで構成されているので、なんだか懐かしい気持ちになる。
この作品は特に原作がない完全新規作だそうなので、令和の世にこんな新規レトロSF映画って出るんだ……とある意味感動していた。
アメリカに令和も何もないけれども。

 

 


何があろうと

無傷で居続ける動物たち

 

 

そしてこの映画を観た大抵の人が語っているであろう(2回目)犬の活躍シーンである。
主人公に向かって手榴弾を投げられた時、たまたまその場に居合わせた犬は、その手榴弾を咥えてぶん投げたロボットに持ってきてくれる。遊んでくれてると思ったのかな?
そして手榴弾は転がって爆発。
(この映画、犬が死ぬ映画チェックマークついちゃう映画だったか……?)
とヒヤリとしたのも束の間、犬は無傷である姿を見せてくれる。

犬、強くない?

爆心地にかなり近い位置にいたのに無傷で立って、もろに爆弾が直撃して破損したロボットたちを見下ろす姿には強者の器を感じさせる。その辺に居ただけの犬なのに……。
もうAIじゃなくて犬に突撃させた方が圧勝できるんじゃないかと思えるぐらいの無傷っぷりである。
まぁ犬には戦いなんてしてほしくないけど。ずっと嬉しそうに走り回っててほしい。

 

 

そして暫く後に今度は猿が出てくる。
このシリアスなシーンに突然猿……?なぜ……?という疑問を持っていると、死屍累々の周囲の惨状はいざ知らず、指があるという猿の利点を活かした行動で特大の戦果をこの猿は上げてくる。

猿、強くない??

AI側の状況を大幅に好転させてるじゃん。そして犬に続いてこちらも無傷。
この映画で最強の存在はノマドでもアルフィーでもなくて、この犬と猿なんじゃないか?
なんせノマドアルフィーは戦いで傷がついていたが、犬と猿は傷ひとつついていなかったし……。

 

人間とAIの争いなんか知らないぞと言わんばかりの自由な振る舞いを見せつけてくる犬と猿。
人間でもAIでもない存在だから動物は予想ができなくて強い存在ということなんだろうか……。
そういえば猫も出てきたけど、猫は無骨ロボットに撫でられてゴロゴロ言ってるだけだった。平和だ……。

 

 


渡辺謙

 

 

冒頭で書いた通り、私はなんの情報も仕入れずにこの映画を観にきたため、当然渡辺謙が出演していることも全然知らなかった。

なんとなく渡辺謙に似ているロボットがいるのを発見した時、
(あれって渡辺謙かな……)
と思ったものの、最後まで確証が持てず、スタッフロールでようやく確信できた。

自分が知っている人が出ているとなんだか安心するよね。うん。

 

今作は結構な頻度で日本語のセリフがあり、私が観たのは吹替版だったため、渡辺謙の日本語もそこそこ聞けた。

(ニューアジアの街中にも日本語はたくさんある)

ただ、作中の渡辺謙は同じ会話中に英語と日本語を織り交ぜていたのだが、あれはどういう演出だったのかは私はあまり分かっていない。

感情が出るところだけ日本語で喋る演出だったとか?

2回目を観る機会があればそこに注目したい。

 

ちなみに渡辺謙の役はなかなか強かった。
しかし自爆ロボットは止めることができなかったので、自爆ロボット>渡辺謙ぐらいの強さである。
あの自爆ロボット、あんなに妙なのに強いのちょっとムカつくな……。

 

 

 

 

 


このように妙ちきりんなところがありながらも、それが愛嬌になっている今作だが、ストーリーも家族愛が根幹にある王道で間口が広いものになっている。

実際劇場で観ている終盤、鼻を啜る音がいくつか聞こえた。
会話でよく出てきた天国のくだりが最後の展開に丁寧に繋がっていて、この映画らしいストーリーになっていたと思う。
感動して泣いている人もたくさんいたし、もしかしてこの映画はB級映画じゃなくて感動超大作だったのかもしれない……。
私が間違っていたのかも……。

 

 

でもその感動シーンの近くで用途不明のデカい機械触手が出てきたりしたが……。
何で作ったのあれ?

 

 

後はテーマとしては人種差別だろうか。
近未来が舞台でロボットで人種差別を表現した作品というと、『Detroit:Become Human』が私の頭には浮かぶが、『Detroit(略)』よりは機械に対する偏見が少ない世界だったと思う。アメリカ以外。
実際ニューアジアでは、無骨ロボットが子供を守って子守りをする様子だったり、人間に近い姿をしたロボットが農作業をしていたりして社会に馴染んでいたし、街中のシーンでは人間とロボットが玉石混交で歩いていた。
平和に共存しているニューアジアと、なぜか海外のAI事情にまで首を突っ込み攻撃してくるアメリカ、
どちらが恐ろしい存在なのかは火を見るより明らかだ。

アメリカの描き方これでいいのか??)

 

 

もしかすると東南アジアの宗教ともうまく繋がった要素などもあるかもしれないが、私は宗教方面の知識には疎いので割愛する。
何かそのあたりに詳しい書籍とかないかな。

袈裟を着用している無骨ロボットが絵になっていてめちゃくちゃ好き。

 

 


そんな感じでSFが好きでレトロガジェットにも心躍り犬も好きな私にはうってつけの楽しい映画だった。
直前まで観に行くか迷っていたけれども、観に行って良かった。
もう一度あの映画館の音響で、エンディングのドビュッシーが聞きたい。