『トガビトノセンリツ』感想
最近、『トガビトノセンリツ』をクリアしました。何故今頃プレイしたのかというとお察しの通り同じ会社から出ている『レイジングループ』が超面白くて、どうやら世界観が繋がっている過去作品もあるらしいとわかったので『DMLC(デスマッチラブコメ)』(iOS&Androidで500円でプレイできます!!)をプレイし、じゃあ次はこれだ!という単純な「世界繋がってるものは全部やる精神」アンド「同じライターさんだ!!精神」が働いたためです。節操がない。
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(ノベルゲームがやりやすいSwitch版をお勧めします。仏舎利ロックもフルボイスで聴けるぞ!)
また、最近『最悪なる災厄人間に捧ぐ』通称さささぐもプレイしました。さささぐはものすごーーーく私好みな終わり方をしたのでもっと感想をぶちまけたいのですが、私が喋りたいところが殆どネタバレなので、あまり大っぴらに言えないという。悲しみ。ただこれだけは言いますが、豹馬くんとクロの最終章での関係すごく好きです!!
(ケムコさんから出ていますが、シナリオ書いてるのはWater Phoenixさんのところの人です。「一緒にいきましょう」のところです。こちらも近々プレイします。)
なんだかケムコADVまとめて感想記事みたいな感じになってきましたが、今回の感想は『トガビトノセンリツ』です。これだけプレイしておいて、何故今一番きていてなんと近々サウンドトラックまで発売される『レイジングループ』の感想じゃないんだ?と思うかもしれません。それは、「私が喋るとしたらこっちかなー」と感じたからです。
『レイジングループ』は後味すっきりなので(『DMLC』もすっきりです。)万人受けする作品だと思うんですよね。ちょっとホラーですけど。だから話題になってるんだろうなと。だから私以外の人もたくさん勧めているだろうし、私も同じことをする必要があるんだろうか······となってしまいまして。すごく好きなんですよ?好きなシーンを言おうとすると全部ネタバレになりますが。
だったら私は勧める人数がより少ない方を選ぶぞ!といだいぶひねくれた理由で『トガビト』の感想を書き連ねることにしました。
あと世界が繋がっている作品群のなかで一作品だけ知名度が突出してしまうのが個人的に微妙だからでもあります。これ言うなら明確に繋がっている『DMLC』勧めろよ!と自分でも思いますが、直近でクリアしたのが『トガビト』なので······。実はトガビトも繋がってたりするんですかね?(知識不足)
(タイトルの通りコメディです。重い描写もありますが基本的にコメディなので明るい作品をやりたい人はぜひ)
ようするにどれが一番面白いかとかではなく私が喋りたいから感想を喋るのです。ここまでに連ねた作品は全部面白いので全部やりましょう。
たくさん前置きしたところで『トガビト』の感想にいきたいと思います。一応ネタバレではないです。誰が犯人!とか具体的なことは書いていません。が、物語の性質を説明する上でなんとなく察せられる人もいる書き方はしているので注意してください。あ、先程の後味の話でなんとなく察した方もいるかも知れませんが、『トガビト』は後味だいぶ苦いですよ。
暗黒青春物語『トガビトノセンリツ』
楽しく課外活動をしていた管弦部一行。そこに突然現れる謎のゴムスーツ軍団!一行は彼らに連れ去られ、目が覚めたら「プリズナーゲーム」という殺人ゲームに参加させられることになってしまった!
以上が簡単なあらすじです。
このあらすじを読むと『トガビト』はデスゲームものに見えるでしょう。私もそう思っていました。ですが、クリア後の感想は違いました。これはデスゲームものというより見出しのとおり暗黒青春物語なのです。
そう感じた理由は幾つかあります。(というか暗黒青春物語云々は公式のおまけWebページにかいてありました。このおまけページはネタバレオンパレードなのでプレイするつもりの方は見るのを一旦待った方がいいです。)なので大まかな三点をまとめてみました。
根性のある“疑いたくない系”主人公
まず一つ目の理由は、主人公の和馬くんがデスゲームやるくらいなら全滅したほうがマシだ!と割と本気で考えているためです。デスゲームものの主人公に有るまじき思考回路です。もちろんこれにはちゃんとした理由があります。
デスゲームものの主人公で私が観測したものの多くは“ 皆を疑いたくないけど皆の為に疑う”、つまり“ 生き残る気がある”タイプなのですが、和馬くんはちょっとしたきっかけがあれば自ら生贄に出てしまう男だと私は思います。つまり、自分の命<皆の絆なわけです。なかなか見かけないタイプ。
和馬くんは頭を全く働かせていないわけではないので「疑うべき状況で探偵役を全くしてくれない」というストレスはそんなにないと思うのですが、この考え方があるせいか状況対策の初動が遅めです。スロースターターでありますが、状況をなんとかしようとは人一倍してると思います。
また、和馬くんは自分のこの「全滅したほうがマシ」志向が周りからあまり受け入れられないであろうということ、つまり他の仲間たちは自分の命の方が大事に思っている人の方が多いだろうということはちゃんと理解出来ているので、できるだけこの考えを表に出そうとはしません。自然と滲み出ることは当然あります。それは仕方ない。
などなど、人によっては「なんだこいつ」と思うかもしれませんが、私は「そこまではっきりいうなら君はそのままがんばりなさいな」という気持ちになりました!このへんの考え方は人によると思いますが和馬くん、あまりにもきっぱり(?)その考え方を貫こうとするので逆に好感が持てました。“ 疑いたくないけど命は惜しい”みたいなどっちつかずタイプよりは遥かにいいです。
この考え方は、既に関係性が出来上がった状態の男女が異常な空間に放り込まれた状況だから輝く考えだと思います。これが見ず知らずの男女をとりあえず放り込んだ状況であればより「なんだこいつ」が増すばかりだったでしょうが、『トガビト』はそんなことにはなりません!絆を重視しておかしくない!
個性的な管弦部の仲間たち
『トガビト』を暗黒青春物語たらしめている二つ目の理由は、登場人物のほとんどが命を優先しないことです。あれれ〜おかしいぞ〜。
···先程私は、自分の命優先の仲間のほうが多いだろう的なことを言いましたが、すいません違うんです。嘘をつくつもりはなかったんです。だって普通思うじゃないですか。こういう状況だと大体の人間は自分の命優先で動くだろうと。当然和馬くんもそう考えたから全滅志向を表に出そうとはしなかったはずです。ですが、私が想像していたよりこの管弦部の皆さん、極まっている人が多かった······。
当然自分安全のために行動する人もいるんですが、それが思ったより少ない!すごい!こんな集団めったにいない!デスゲームに放り込みたくもなる!
こういったデスゲームで命よりやりたいことを優先するキャラクターは大体少数精鋭なイメージがあったのですが、すごいなぁ······ほとんどじゃん······。(プレイしてるとき大体こんなテンションでした。)
管弦部の愉快な仲間たちはみんな(大体は付かない)腹に一物抱えている人たちばっかりなので、自分の命<○○の○○に入る部分が多種多様なんですよね。
途中で和馬くんの親友、征史郎君のセリフで「僕らの勝敗は既にゲームの勝敗とは別次元のところにある。」「勝利条件は、各々探すべき。」というものがあるんですが、本当にこの通りでした。○○がそれぞれの勝利条件なんです。登場人物のみんなが自分の勝利条件を勝手に決めて、それを貫くために1人で決意して相談しないで行動するので、それを主人公の一人称視点でだけ眺めるプレイヤーはヤムチャの気分を味わえます。起こっていることはわかるのに何故そんなことしたのかが分からないんですよ!なんだこいつら!(褒めてる)
二周目で他の登場人物の視点で物語を見るモードが解禁されるのですが、それ読んでもすげぇ思考回路してるな······ってなるので相当ですよ。おかげでおまけ全部買いました。
なんと言いますか、主人公が決断しなくとも皆自分で考えて行動するんですよね。皆生きてるんだなぁと実感します。
あとそこそこのキャラクターがやりたいことやって笑顔で終わっていくので(当然笑顔で終わらないキャラクターもいる)ヤムチャ視点なのに「なんか、すごいものを見たな······」という気分になれます。ヤムチャ視点だからこそなのかもしれませんが。夏の最後の綺麗な花火を見た気持ちです。
ちなみに個人的に好きなのは亮也くんと彩音先輩です。
ゲームのルール設定
最後!三つ目の理由は、一部ルールをわざと緩めにしているところです。
これは作中でもいわれていることなんですが、管弦部がやることになる「プリズナーゲーム」にはルール部分に記載していない決まり事があるんです。記載されているルールの方に興味があるひとは体験版をダウンロードしてみましょう。無料でルールが見られます。
この記載されていない決まり事が何なのかは伏せますが、これが記載されていないおかげでヤムチャ視点が加速しています。腹に一物抱えている変わった奴らがルール記載外の規定に従って行動をとるんです。恐ろしいですね。こんなのどうやって対策をしろというんだ!更にこれがデスゲームということもあり、恐怖で狂って必ずしも理にかなった行動をとるわけではないという嬉しい(?)おまけ付き。どうしてその行動をしたんだ!?という気持ちに何度もなれます。すごい。
というかキャラクターが記載外のルールに従って行動をしているのか、プリズナーゲーム関係なく自分のやりたいことのために行動しているのかが主人公視点だけなこちらはハッキリとした判断ができないんです。たぶん1回だけでこの状況を全て把握してニッコリ観戦できるのは黒幕だけでしょう。
このようにルール記載をわざとやらないことで変人たちの常軌を逸した行動も加速し、ゲームに対して完璧な対策を立てることがほぼ不可能な状況になっているわけです。デスゲームを完全解決してほしい人には痛い点だと思います。というか攻略できないのにデスゲームである意味があるんだろうか?とならなくもない。(そのあたりは作中で······)
ゲームを正面から攻略してやるぜ!といったキャラクターが実は一人もいないため、そのあたりもストレスになる人はいるでしょう。
しかし『トガビト』において、勝利条件はルールに記載された条件を達成することではなく、自分で決めるものなのです。
私の勝利条件は「キャラクターの生き様を見届ける」ことなので私的には勝利です。
えー、以上の三点から、私は『トガビトノセンリツ』はデスゲーム攻略主軸としない青い春な暗黒人間模様を眺めて楽しむ作品だと考えます。(締め方がわからなくて論文調になってしまった······)
とりあえずやってみてください
なんというか、万人受けする作品ではないんだろうなぁ······感がひしひしとする文章を並べてしまいましたが。(妙に長い前置きはこのあたりが理由です。)個人的にはすごい面白かったです。
変人たちが自分のやりたいことを勝手にやって自己満足していく様はなかなか壮観でした。
そう!『トガビト』は、暗黒青春物語なのです!デスゲーム攻略を楽しみたい方はたぶんあまり向かないかと!逆に変人たちの““生き様””を見たい方たちはぜひ!ダウンロードしてください!無料で序盤が読める体験版もありますのでぜひお手元のスマートフォンに!!登場人物の真意がわからないのは二周目とおまけで大体解決されるので!!
後味すっきりとはいかないですが不思議な中毒性ある『トガビトノセンリツ』、気軽にポチッといかがでしょうか?
次は鈍色のバタフライかいきましょう、どっちにしようかなぁ······。